ペットの熱中症(熱射病)
熱中症の症状
●「ハァ、ハァ」とあえぐような呼吸をしている。
●耳を触ると、いつもより熱い。(体温の上昇)
●声をかけても、横になったまま呼吸が苦しそう。
●意識がない。あっても目しか動かさない。
●下痢をしている。失禁している。
原因
●熱のこもりやすい室内(例:西日のあたるマンションの部屋)や、自動車内などで、動物だけで留守番させている。炎天下の自動車内は短時間で高温状態になります。
●まだ日の高い午後に、照り返しの強い舗装道路を散歩する。
●庭につながれて日陰に入ることができず、直射日光に当たっている。
治療・対処法
気付くのが早ければ、治る確率も高くなります。
●意識がある場合には、冷たい水をたくさん飲ませゆっくり休ませましょう。ただし、一気に大量の水分を飲ませると危険になる場合があります。血液が急に薄まったり、胃や腸などの消化器官がビックリしてしまいますので、少量飲ませて一旦様子を見てから、また少量を与えるようにしてください。
●脱水症状の改善には、水を飲ませることが最適ですが、普通の水では身体が水分を吸収できず、尿としてそのまま体外に排泄されてしまうこともあります。緊急時には、ナトリウムなどのミネラルがバランスよく含まれた人間用のスポーツドリンクなどを1:1くらいに水で薄めたものを飲ませるほうがよいでしょう。
●風呂場などで身体全体に水をかけてください。または木陰に移して水をかけます。急いで身体の内から熱を放散させ、体温を下げます。ただし、氷水をいきなりかけるのは注意が必要です。急激に血管が縮まり、悪化することがあります。
●わきの下や首の付近、後足の付け根(股間)に氷または氷まくらなどをあてて冷やします。この部分には大きな血管が集まっていて、そこから末端に分岐しているからです。
●動物病院では、体温を冷やしながら点滴をして水分や電解質バランスを整えます。
予防対策
●外気温が急上昇するような夏場は室内の風通しに気をつけて、室温が上昇しないようにエアコンをつけたままにしておくことが重要です。
●新鮮な水をたっぷり入れた容器を室内の何ヵ所かに置いておきましょう。
●外気温の高い梅雨時期や夏場などは、直射日光のあたる屋外駐車場の車内で留守番させることは避けましょう。
●若いころから太り過ぎ、肥満傾向にならないように健康管理を行い、太っているならダイエットをしましょう。
●散歩は時間をずらし、気温が上がり暑くなる前の早朝か、地面が冷える夕方まで待ってからにしましょう。
特に気をつける犬種
犬は被毛に覆われているので寒さには比較的耐えることができますが、逆に暑さには弱いのです。犬の汗腺は体表ではなく肉球にあり、ハァハァと舌を出して呼吸することによって熱を発散させ、体温を下げています。
鼻の短い短頭種犬は特に気をつける必要のある犬種です(シーズー、ペキニーズ、パグ、ブルドッグ、ボクサーなど)。これらの犬種は解剖学的に首が圧迫されていて喉の部分が狭く、体温調節を行うのに十分な長さと機能が保たれていません。軟口蓋が喉に近いため、息を吸うたびに気管内に落ち込み気道を塞ぐため、呼吸がしづらくなっています。肥満していると気管は押しつぶされたように変形します(気管虚脱)。少し運動したり、興奮しただけで、苦しそうな「ゼイゼイ」という荒い呼吸になり、いびきもかくようになります。
このような体質的、機能的に呼吸機能に問題のある犬が高温多湿の室内や車内で取り残されると、体温が上昇し自分でコントロールできなくなります。脱水症状を起こし、血液循環が悪くなり、酸欠状態になって、舌は真っ青になり(チアノーゼ)、意識がもうろうとし、最悪の場合はショック状態で死に至ります。
昨今のマンションやアパートは、機密性・遮音性も高く、安全性も高いのですが、反面、空気の通り道がないことも多いのです。タイマーでエアコンが時間が消えてしまったり、部屋に閉じ込められ逃げられないこともあります。部屋に十分な広さがある、もしくは部屋数が多ければ、暑さから逃げることも可能になります。
熱中症はもちろん短頭種犬に限らず、最近はゴールデンレトリバーやチワワなどにも多く、以前はシベリアンハスキーやアラスカンマラミュートにもよく見られました。
熱中症はどんな犬にも、また比較的少ないですが、もちろん猫にも起きるものです。過信は禁物です。対処法をしっかり頭に入れておき、熱中症と疑われる状態を発見したときには迅速に対処し、最寄りの動物病院に搬送しましょう。